【第4回】
「危ないから撤去する」は、本当に正解ですか?(前編)
〜子どもの成長に必要な「挑戦」と、取り除くべき「ハザード」〜
【第4回】
「危ないから撤去する」は、本当に正解ですか?(前編)
〜子どもの成長に必要な「挑戦」と、取り除くべき「ハザード」〜
この記事の筆者:大坪 龍太(プレイグラウンド・セーフティ・ネットワーク/IBRA 代表 この記事の筆者:大坪 龍太(プレイグラウンド・セーフティ・ネットワーク/IBRA 代表
遊具で子どもが転んだり、少し高いところから飛び降りたりする姿を見ると、私たち大人は思わず、「危ないから、やめなさい」と言いたくなります。
もし事故が起きれば、「こんな危険な遊具は撤去した方がよい」「もっと低く、もっと動かない遊具に替えるべきだ」という意見が出ることもあります。
もちろん、子どもの生命に関わる事故や、重大な後遺障害につながる事故は防がなければなりません。壊れた遊具や、子どもには気づけない危険な状態を放置してよいということでもありません。
しかし、転ぶ可能性、高さ、速さ、揺れなど、遊びに伴う危険性をすべて取り除こうとすると、遊具の楽しさや挑戦する機会も失われてしまいます。
「危ない」という一つの言葉の中には、性質の異なる危険性が含まれています。子どもが自分で気づき、考え、挑戦することによって成長につながる危険性。そして、遊びの価値とは関係がなく、子どもには気づくことが難しい、重大事故につながる危険性。安全な遊び場をつくるためには、この二つを区別して考える必要があります。
遊具で子どもが転んだり、少し高いところから飛び降りたりする姿を見ると、私たち大人は思わず、「危ないから、やめなさい」と言いたくなります。
もし事故が起きれば、「こんな危険な遊具は撤去した方がよい」「もっと低く、もっと動かない遊具に替えるべきだ」という意見が出ることもあります。
もちろん、子どもの生命に関わる事故や、重大な後遺障害につながる事故は防がなければなりません。壊れた遊具や、子どもには気づけない危険な状態を放置してよいということでもありません。
しかし、転ぶ可能性、高さ、速さ、揺れなど、遊びに伴う危険性をすべて取り除こうとすると、遊具の楽しさや挑戦する機会も失われてしまいます。
「危ない」という一つの言葉の中には、性質の異なる危険性が含まれています。子どもが自分で気づき、考え、挑戦することによって成長につながる危険性。そして、遊びの価値とは関係がなく、子どもには気づくことが難しい、重大事故につながる危険性。安全な遊び場をつくるためには、この二つを区別して考える必要があります。
子どもの成長に必要な遊びの舞台でのチャレンジ(イメージ生成画像) 子どもの成長に必要な遊びの舞台でのチャレンジ(イメージ生成画像)
国の安全指針が大切にしてきた「二つの危険性」 国の安全指針が大切にしてきた「二つの危険性」
私は、国土交通省の「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」の策定と改訂に、関わってきました。その中で一貫して大切にされてきたのが、子どもの遊びに伴う危険性を「リスク」と「ハザード」に分けて考えることです。
国土交通省の指針では、子どもは遊びを通して冒険や挑戦をし、心身の能力を高めていくものであり、そのこと自体が遊びの価値の一つであるとしています。そのうえで、遊びに伴う危険性を、次のように整理しています。
● リスク:子どもの事故回避能力を育てる危険性や、子どもが自分で予測し、どう対応するか判断できる危険性
● ハザード:事故につながる危険性や、子どもが予測できず、どう対応すればよいか判断できない危険性
現在の改訂第3版でも、「遊びの価値を尊重してリスクを適切に管理し、ハザードの除去に努める」という考え方が、初版から一貫して受け継がれています。(出典:国土交通省「都市公園における遊具の安全確保に関する指針(改訂第3版)」)
私は、国土交通省の「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」の策定と改訂に、関わってきました。その中で一貫して大切にされてきたのが、子どもの遊びに伴う危険性を「リスク」と「ハザード」に分けて考えることです。
国土交通省の指針では、子どもは遊びを通して冒険や挑戦をし、心身の能力を高めていくものであり、そのこと自体が遊びの価値の一つであるとしています。そのうえで、遊びに伴う危険性を、次のように整理しています。
● リスク:子どもの事故回避能力を育てる危険性や、子どもが自分で予測し、どう対応するか判断できる危険性
● ハザード:事故につながる危険性や、子どもが予測できず、どう対応すればよいか判断できない危険性
現在の改訂第3版でも、「遊びの価値を尊重してリスクを適切に管理し、ハザードの除去に努める」という考え方が、初版から一貫して受け継がれています。(出典:国土交通省「都市公園における遊具の安全確保に関する指針(改訂第3版)」)
同じ遊具の中にも、リスクとハザードがあります 同じ遊具の中にも、リスクとハザードがあります
例えば、クライミング遊具を考えてみましょう。子どもの目の前に、少し高い壁があります。手や足をどこに置くかを考え、途中で「これ以上は難しい」と感じれば、低い位置へ戻ることもできます。
この高さや難しさは、子どもが見て理解し、自分で挑戦するかどうかを選べるものです。うまく登るために身体を使い、手足を置く場所を考え、怖さと向き合う経験は、身体能力、判断力、自信などの成長につながります。これが、遊びの価値と結びついたリスクです。
一方、そのクライミング遊具の裏側で、手掛かりを固定するボルトが緩んでいたとします。子どもは、そのボルトが緩んでいることを知らず、手掛かりが固定されていると信じて体重をかけます。突然手掛かりが外れれば、予測できない転落につながります。
このボルトの緩みは、子どもの挑戦や成長とは関係がありません。子どもには気づきにくく、対処することも難しいため、取り除かなければならないハザードです。同じ遊具の、同じ「落ちる可能性」に見えても、危険性の意味は大きく違うのです。
例えば、クライミング遊具を考えてみましょう。子どもの目の前に、少し高い壁があります。手や足をどこに置くかを考え、途中で「これ以上は難しい」と感じれば、低い位置へ戻ることもできます。
この高さや難しさは、子どもが見て理解し、自分で挑戦するかどうかを選べるものです。うまく登るために身体を使い、手足を置く場所を考え、怖さと向き合う経験は、身体能力、判断力、自信などの成長につながります。これが、遊びの価値と結びついたリスクです。
一方、そのクライミング遊具の裏側で、手掛かりを固定するボルトが緩んでいたとします。子どもは、そのボルトが緩んでいることを知らず、手掛かりが固定されていると信じて体重をかけます。突然手掛かりが外れれば、予測できない転落につながります。
このボルトの緩みは、子どもの挑戦や成長とは関係がありません。子どもには気づきにくく、対処することも難しいため、取り除かなければならないハザードです。同じ遊具の、同じ「落ちる可能性」に見えても、危険性の意味は大きく違うのです。
ボルトの緩みと錆の状態(右)に修繕を実施した状態(左)(イメージ生成画像) ボルトの緩みと錆の状態(右)に修繕を実施した状態(左)(イメージ生成画像)
リスクとハザードの違い
リスクとハザードの違い
ここまで、遊びの価値と結びついた「リスク」と、取り除くべき「ハザード」の基本的な考え方を見てきました。後編では、この考え方を実際の現場でどう使うかを、国際規格ISO4980が示す「ベネフィット・リスク評価(BRA)」の実践的な進め方とあわせてご紹介します。
(次回予告・第4回 後編へつづく)次回は、リスクとハザードの境界が状況によって変わることや、安全対策が新たなハザードを生まないための注意点、そしてISO4980とBRAの5つのステップによる具体的な進め方を解説します。
ここまで、遊びの価値と結びついた「リスク」と、取り除くべき「ハザード」の基本的な考え方を見てきました。後編では、この考え方を実際の現場でどう使うかを、国際規格ISO4980が示す「ベネフィット・リスク評価(BRA)」の実践的な進め方とあわせてご紹介します。
(次回予告・第4回 後編へつづく)次回は、リスクとハザードの境界が状況によって変わることや、安全対策が新たなハザードを生まないための注意点、そしてISO4980とBRAの5つのステップによる具体的な進め方を解説します。
PROFILE
この記事の筆者:大坪 龍太 この記事の筆者:大坪 龍太
(プレイグラウンド・セーフティ・ネットワーク/IBRA 代表) (プレイグラウンド・セーフティ・ネットワーク/IBRA 代表)
子どもの成長・発達に必要な「リスク」と、除去すべき「ハザード」を、ベネフィット・リスクアセスメント(BRA)で切り分けて考える、パーク・マネジメントの専門家。国土交通省の安全指針やISO4980;2023(BRA)の策定委員の経験を基に、全国の自治体や施設管理者へ向けたBRAに関する普及啓発活動を行う。 子どもの成長・発達に必要な「リスク」と、除去すべき「ハザード」を、ベネフィット・リスクアセスメント(BRA)で切り分けて考える、パーク・マネジメントの専門家。国土交通省の安全指針やISO4980;2023(BRA)の策定委員の経験を基に、全国の自治体や施設管理者へ向けたBRAに関する普及啓発活動を行う。
INFORMATION
【専門相談窓口のご案内】 【専門相談窓口のご案内】
あそび場の安全管理を支える あそび場の安全管理を支える
「この遊具に潜む危険性は、成長のための『リスク』なのか、取り除くべき『ハザード』なのか、見極めが難しい……」。その判断に迷われたら、ぜひ専門の目による診断をご活用ください。
本サイトの専門相談窓口(運営:KTS)では、遊びの価値を尊重しつつ、見過ごせない重大なハザードのみを的確に見分ける点検・診断のアドバイスを行っています。管理者様の不安に寄り添いサポートしますので、まずはお気軽にご相談ください。
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